冷凍食品工場のM&Aでは、食品営業許可の手続と、製造・品質管理を引き継ぐ準備を並行して進めます。許可証があること、HACCPの書類があること、実際に衛生管理が継続できることは、それぞれ確認する対象が異なります。本記事は工場売却時に保健所や専門家へ相談するための確認資料です。
更新:2026年9月7日 / 編集:冷凍食品M&A総合センター編集部(運営:株式会社M&A Do)。本記事は検討段階の確認事項を整理したもので、個別案件の価格や契約条件を示すものではありません。
事業譲渡による食品営業許可の承継は届出制度へ
厚生労働省の案内では、2023年12月13日から、食品衛生法上の営業を事業譲渡する場合、譲受人が届出によって営業者の地位を承継する制度となっています。新たな許可取得等を要しない扱いですが、譲受人による遅滞のない届出と、譲渡を証する書類等の添付が必要です。
譲渡人は、可能な限り事前に管轄保健所へ相談し、事業内容や衛生管理について譲受人へ説明します。原則として承継前後で許可・届出の内容は変わらず、受理後は保健所による衛生管理状況等の確認が行われます。設備・製品・施設を変更する予定がある場合は、変更内容も含めて必要な手続を保健所に確認してください。
出典:厚生労働省「事業譲渡に関する手続が整備されました」(PDF)。制度の存在だけで、特定の取引や施設変更に必要なすべての手続が完了するものではありません。
取引方法を決める前に許可証と実態を対応させる
最初に、営業者名、施設所在地、営業の種類、許可番号・有効期間と、実際に製造する商品を一覧にします。冷凍食品製造業の許可以外の許可・届出が関係するかは、製造工程や事業内容に応じて確認します。「工場一式を売る」という説明だけでは、手続や対象範囲を判断できません。
| 項目 | 整理する内容 |
|---|---|
| 譲渡方法・日程 | 株式譲渡/事業譲渡等の予定、譲渡人・譲受人、実行予定日 |
| 許可・届出 | 許可証、変更届、更新時期、施設名と営業者の対応 |
| 製造と施設 | 商品群、工程図、平面図、主要設備、承継後の変更予定 |
| 衛生管理体制 | 責任者、衛生管理計画、手順書、記録の保存・引き継ぎ方法 |
| 譲渡の範囲 | 対象事業・施設・設備、製造継続の予定、譲渡を証する書類 |
株式譲渡では営業者である法人が継続する場合でも、役員等の変更に伴う届出や取引先との合意が必要かを確認します。事業譲渡では、許可の承継と別に、従業員、施設賃貸借、OEM契約、商標・配合などの引き継ぎを整理します。
HACCPは認証の有無だけで判断しない
2021年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められています。事業者の区分に応じた方法を確認し、衛生管理計画、必要な手順書、実施記録、振り返りを運用します。民間のHACCP認証、ISO 22000、FSSC 22000等の取得自体が一律に義務付けられる制度ではありません。
一方、民間認証が得意先との契約条件となっている場合は、認証の範囲、有効性、変更時の連絡・審査の扱いも確認が必要です。認証書があっても、日々の記録や是正が十分かという調査は別途行います。
出典:厚生労働省「HACCPに沿った衛生管理」、制度化に関するQ&A(民間認証の取扱い)。
冷食工場の品質調査に用意する6種類の資料
- 工程と管理点:原料受入から加熱、冷却、凍結、包装、保管、出荷までの工程図と、危害要因・管理方法の説明。
- 温度と異常対応:設備・商品の管理基準、測定記録、機器の点検、温度逸脱時の隔離・出荷判定・是正記録。すべての管理場面を一律の温度数値で代用しません。
- 規格・表示:原材料規格書、商品仕様書、アレルゲン情報、配合・表示の版、変更承認履歴。現場で使う版と顧客承認版を照合します。
- 追跡性:原料ロットと製品ロット、在庫・出荷先を結び付ける資料、回収訓練や対象数量の照合結果。
- 監査と是正:保健所・得意先・認証機関等の指摘、期限、対応責任者、是正完了の根拠。未完了項目も一覧にします。
- 事故・苦情:異物、微生物、表示、温度などの苦情・事故履歴と原因分析、再発防止、関係先への報告状況。
現場調査では、記録の保存場所だけでなく、担当者が不在でも手順を説明・実行できるかを確かめます。記録が欠けている場合に過去分を作り直すのではなく、欠落期間、理由、現在の改善措置を説明できるようにします。
契約から最初の出荷までに決めること
営業者・責任者・担当窓口の変更と、衛生管理の引き継ぎを日程表にします。品質責任者、出荷判定権限、異常時の連絡先、検査機関・保守業者への発注、監査予定を確認し、実行直後の出荷承認を曖昧にしないことが大切です。
未完了の是正や更新予定がある場合は、対応費用と担当を整理し、取引条件にどう反映するか専門家と協議します。売却のために品質上の課題を隠すより、買い手が対応計画を検討できる状態にすることが重要です。
